40代になると男性も女性も代謝が下がり、どうしても無駄な体重が増えてしまいがちです。ダイエットには筋トレが最適ですが、若い時のようなやり方でダイエット筋トレを行っても上手くいかないケースが少なくありません。
40代で階級制のアームレスリングで毎年減量を行い、二度全日本マスターズのメダルを獲得した筆者が、実際の経験をまじえて最適な方法を、自宅で取り組める自重トレーニングとダンベル筋トレから厳選してご紹介します。
また、あわせて若い頃のダイエット筋トレと40代でのダイエット筋トレの相違点や気をつけるポイントなども詳しく解説します。
なお、本記事では下記の公的サイトの情報に基づき記載をしております。
”効果的な運動プログラムを作成するためには、トレーニングの原理原則に従うことが大切です。また健康づくりのための運動プログラム作成の際には安全性を最重視する必要があります。(厚生労働省|e-ヘルスネット)”▼運動プログラム作成の原理原則
運動プログラム作成のための原理原則 -安全で効果的な運動を行うために
”立ったり歩いたり姿勢を維持したりといった日常動作の基盤となる筋肉が、QOL(Quality Of Life:生活の質)に強い影響を与える筋肉といえます。具体的には太腿前の大腿四頭筋・お尻の大臀筋・腹筋群・背筋群があげられます。これらの筋肉を鍛えるトレーニングを継続的に行うこと、また日常から活動的な生活を送ることが大切です。(厚生労働省|e-ヘルスネット)”▼QOLに関する公的情報
QOLの維持・向上に大切な筋肉は?
■40代のダイエットに筋トレがおすすめな理由
●落ちがちな基礎代謝が向上する
筋トレが有酸素運動よりもダイエットに対して有効なことは、これまでも何度も解説してきましたが、特に40代のダイエットに筋トレがおすすめな理由は以下の通りです。
①単位時間あたりの運動カロリーは、筋トレ≧有酸素運動であり、仕事に忙しい40代でも最短時間で効率的にカロリー消費ができます。一日30分程度でも十分に有効です。
②運動しない日でも筋トレの筋肉痛回復のために新陳代謝エネルギーとしてカロリー消費が発生します(有酸素運動は運動しない日はカロリー消費は発生しない)。代謝が落ちがちな40代にはとくに効果的です。
③筋トレをすると筋密度が向上し「太りにくく痩せやすい」基礎代謝の高い体質になり、リバウンドも抑えられます。何もしないと筋力が低下していく40代に筋トレをしておくと、50代、60代でも筋量が維持しやすくなります。
これらが、40代のダイエットに特に筋トレが有効な理由ですが、若い時と違い、ただやみくもに筋トレをするとかえって逆効果になる場合もありますので、ポイントを押さえてダイエット筋トレを行っていくことが大切です。
■40代のダイエット筋トレで気をつけるポイント
●関節や靭帯に負荷の少ない種目と負荷回数設定で行う
40代は筋肉の回復が20代、30代よりも遅くなることは多くの人が認識していますが、まだ40代ですから、それほど大幅な変化はありません。しかし、40代になると大幅に回復が遅れる身体の部位があり、それが「関節」と「靭帯」です。
年齢に関係なく、筋トレを継続するのを断念する理由として多いものの一つに「関節や靭帯を痛めて筋トレができなくなる」というものがあります。筋肉は最大で72時間あれば、元よりも強く「超回復」しますが、関節や靭帯は痛めると数週間単位で時間がかかる上、「回復」するだけです。無理な筋トレを続けてていると関節や靭帯を痛めてしまう理由がここにあります。
40代ともなると、関節や靭帯を痛めると数ヶ月単位で回復をさせなくてはいけないケースも増えてきます。ですので、40代のダイエット筋トレで、最大に気をつけなくてはいけないことは、関節や靭帯に負担の少ない筋トレ種目を選ぶとともに、負担の少ない負荷回数設定で行っていくということです。
■40代のダイエット筋トレの負荷回数設定
●ゆっくりとした動作で20回の反復で行う
ダイエットのために筋トレをする場合にターゲットとなるのは、鍛えても筋肥大せず筋密度が向上するだけの遅筋(持久筋)です。遅筋は1分以上の継続的な収縮で鍛えられるので、筋トレにおいては、20回以上の反復回数で限界がくる負荷回数設定でトレーニングしていきます。
若い人は、少々反動を使ってでも、30回、40回と回数をこなしたほうが効果的なケースもありますが、40代でその方法をとると、関節や靭帯に大きな負担がかかってしまいます。
40代のダイエット筋トレでは、回数を増やすのではなく、ゆっくりとした動作のスロートレーニングで、じんわりと筋肉に効かせていく方法のほうが、怪我をせずに継続するという観点からも最適です。なお、ボディーメイクとして筋肉をつけたい場合は正しいフォームでじっくりと効かせながら15回の反復で行うのがベストです。
■40代むけの筋トレ種目
●プッシュアップバーでの腕立て伏せ
上半身の押す自重トレーニング種目として40代に最適なのが、プッシュアップバーを使って手を平行に構える腕立て伏せです。これは、手首関節と肩関節への負荷を軽減するのが理由です。
まず、プッシュアップバーを使うことで手首を伸ばした状態でトレーニングができるため、手首関節への負荷が大幅に減少します。また、手幅を狭めて平行に構えることで、肩関節への負荷を大きく減少させることが可能です。
【動作の正しい手順】
①背すじを伸ばし、肩幅よりやや広く手幅を開いてプッシュアップバーをグリップして構える
②背すじを伸ばしたまま上半身を倒す
③同じ軌道でゆっくりと効かせながら元に戻る
こちらの写真は、実際に筆者の運営するジムで使用しているタイプで、傾斜がついているので、ターゲットにする筋肉部位別にさまざな構え方ができて便利です。
●ハンマーグリップダンベルプレス
上半身の押すダンベル筋トレとして40代におすすめなのが、ダンベルを平行に保持して行うハンマーグリップダンベルプレスです。
通常のダンベルプレスは、しっかりとしたテクニックと上半身の柔軟性がなければ、かなり肩関節への負担がありますので、これもやはり、肩関節への負担を軽減させられることが最大の理由です。
【動作の正しい手順】
①ベンチ(床でも可)に仰向けになり肩甲骨を寄せる
②肩甲骨を寄せたままダンベルを押し上げる
③顎を引き腕を閉じる動作を加えて大胸筋を完全収縮させる
④ゆっくりと効かせながら元に戻る
なお、ベンチ類がない場合は、床で行っても一定の効果は得られます。
筆者の運営するジムでは、左から順にアジャスタブルダンベル・アーミーダンベル・スピンロック式ダンベルといったさまざまなタイプのダンベルを使用しています。
また、スピンロック式ダンベルもプラコートタイプ・ラバータイプ・アイアンタイプなどを使用しています。
●ダンベルのかわりにチューブチェストプレス
自宅にかさばるダンベルを置くのはちょっと、と感じる方にはトレーニングチューブを使ったチューブチェストプレスがおすすめです。
こちらが、もっとも基本となるチューブチェストプレスのやり方で、正面に腕を押し出します。これにより、大胸筋全体と三角筋・上腕三頭筋にまんべんなく効かせることが可能です。
【動作の正しい手順】
①肩甲骨を寄せて構える
②肩甲骨を寄せたまま腕を押し出す
③腕を押し出した位置で顎を引き、大胸筋を完全収縮させる
また、女性の場合、チューブチェストプレスをバストアップ&リフトアップに有効な大胸筋上部に効かせるためには、大胸筋上部が強く作用する「体幹に対して腕を斜め上方に押し出す」軌道で行う必要があります。
また、大胸筋を最大伸展させて効率的にトレーニングするためには、動画のように左右交互に腕を押し出すオルタネイトスタイルで行うことをおすすめします。
トレーニングチューブは単品で買い揃えるとかなり割高になりますので、写真(筆者の運営するジムの備品)のような強度の違う複数本がセットになったものがリーズナブルでおすすめです。
上半身の押す筋トレにぜひとも使用したいのが手首を保護するリストラップと呼ばれる筋トレグッズです。多くの初心者は、まだ手首を保持する力が弱く、腕立て伏せなども先に手首が痛くなってしまい完遂できないケースが少なくありません。リストラップを使えば、最後まで筋肉を追い込むことができ、とても効率的に身体を鍛えていくことが可能です。
●斜め懸垂・インバーテッドロー
上半身の引く筋肉の自重筋トレとして、40代に最適なのが斜め懸垂・インバーテッドローです。通常の懸垂よりずいぶん強度が落ちる分、ゆっくりとした動作のスロートレーニングで鍛えることが可能です。
また、この動画のように、自宅の机を流用して斜め懸垂を行うことも可能です。
【動作の正しい手順】
①机の下に入り、縁を持って背筋を真っ直ぐにして構える
②胸を張り、肩甲骨を寄せながら上半身を引き上げる
③上半身を引き上げるたら、肩甲骨を寄せきり背筋群を完全収縮させる
④同じ軌道でゆっくりと効かせながら元に戻る
なお、斜め懸垂でも動作がきついという方は、このようにドアにシーツを挟んで緩やかな角度の斜め懸垂を行ってください。
【動作の正しい手順】
①二つに折り、真ん中を玉結びにしたシーツをドアに挟んで固定する
②適度な角度になるように足の位置を決める
③シーツを握り、顎を上げて肩甲骨を寄せながら身体を引き上げる
④肩甲骨を寄せきり、背筋群を完全収縮させる
⑤同じ軌道でゆっくりと効かせながら元に戻る
最近はドア部分に簡易的に取り付けられるこのような懸垂器具があるので便利です。
●ライイングダンベルローイング
上半身の引く筋肉のダンベル筋トレとして40代に最適なのが、この動画のようなライイングダンベルローイングです。腰への負担を完全になくし、背筋の収縮に集中することができます。
【動作の正しい手順】
①ベンチにうつ伏せになり、両手を伸ばした状態でダンベルを持って構える
②肩甲骨を寄せながらダンベルを上げる
③肩甲骨を寄せきり広背筋を完全収縮させる
④ゆっくりと効かせながら元に戻る
●チューブローイング
ダンベルローイングのかわりに、トレーニングチューブを使った引く動作で背中の筋肉を鍛えることも可能で、なかでも、この動画のようなチューブローイングは「上から腕を引く動作」になるので、腰への負担が少なくおすすめです。
【動作の正しい手順】
①胸を張って背すじを伸ばして構える
②腕を引きながら肩甲骨を寄せる
③肩甲骨を寄せきるとともに顎を上げて背筋群を完全収縮させる
④同じ軌道でゆっくりと効かせながら元に戻る
●四の字クランチ
腰への負担が少なく、腹直筋と腹斜筋を同時に鍛えられる、40代におすすめの腹筋運動がこの動画のような「四の字クランチ」です。
【動作の正しい手順】
①仰向けになり足を組んで構える
②息を吐きながら肘を対角線の膝に近づける
③肘と膝をつけたら息を吐ききり、顎を引いて腹筋を完全収縮させる
④同じ軌道でゆっくりと効かせながら元に戻る
●椅子スクワット
40代におすすめの下半身の自重トレーニングが椅子を使ったスクワットです。椅子に腰掛ける軌道でスクワットを行うことで、膝関節に負担のない動作ができます。また、椅子があることにより、過度に腰を下ろすことも防止できます。
【動作の正しい手順】
①足を肩幅程度に開き、膝がつま先より後ろになるようにして、椅子の前半分に座って構える
②背中が丸まらないように、少し上を見て立ち上がる
③椅子に座る要領で、膝がつま先よりも前に出ないように注意して斜め後ろにしゃがむ
④お尻が椅子に触れたら、椅子に座らずに再び立ち上がる
●ダンベルレッグエクステンション
ダンベルレッグエクステンションは、数ある下半身のダンベル筋トレのなかでも、各関節への負担が少ない種目で、40代におすすめです。反動を使わないことと、状態を後ろに傾けると腰に負担がかかることに注意してください。
【動作の正しい手順】
①ベンチなどに座り、足にダンベルを挟んで構える
②上半身を倒さずに、膝から先だけでダンベルを上げる
③ゆっくりと効かせながらダンベルを下ろす
●チューブレッグプレス
ダンベルのかわりにトレーニングチューブで下半身を鍛えることも可能で、なかでもチューブレッグプレスは下半身全体に効果があるのでおすすめです。
チューブレッグプレスでもっとも大切なポイントは、つま先を膝よりも高い位置に上げたままセットを行なうことで、軌道としては斜め上方に足を押し出す方向になります。
これが、斜め下方に足を伸ばすような軌道で動作すると、太ももの筋肉に負荷が余りかかりませんので注意をしてください。
【動作の正しい手順】
①仰向けになり膝を曲げ足先にゴムをかけて構える
②斜め上方にむけて足を押し出す
③張力に耐えながらゆっくりと元に戻る
●40代のダイエット筋トレの一週間の組み方
代謝が落ちぎみの40代のダイエット筋トレは、回復にも重点を置く必要があります。若い頃と同じように、週4~5回の高頻度でプログラムを組むと、回復が追いつかず、疲れがたまり筋トレ自体が継続できなくなることめ考えられます。
全身の筋肉を三分割して、週三回のスプリットトレーニング(部位分割法)で行うのが適切で、具体的には以下のようになります。
①月曜日:上半身の押す筋肉+腹筋
・腕立て伏せやダンベルプレスを3~5セット
・四の字クランチを2~3セット
②水曜日:下半身の筋肉
・椅子スクワットやレッグエクステンションを3~5セット
③金曜日:上半身の引く筋肉+腹筋
・斜め懸垂やダンベルローを3~5セット
・四の字クランチを2~3セット
※あくまで目安ですので、体力に合わせてセット数は増減させてください。
●40代のダイエット筋トレにおすすめの食事
若い頃は、筋トレや運動をして新陳代謝を上げるだけでも体重が減るケースが少なくありませんが、40代ともなると、食事への配慮も大切です。特に豆腐やささみ肉など、低カロリーのタンパク質をしっかりと摂ることが重要で、タンパク質不足になると、ただでさえ落ちてきている基礎代謝がさらに悪くなり、筋肉痛の回復が大幅に遅れてしまい非効率です。